PMSによる吐き気、毎月生理前に気持ち悪くなってつらい思いをしていませんか?
「またこの時期が来た…」と憂鬱になったり、「もしかして病気かも?」と不安になったりすることもあるかもしれません。
PMS(月経前症候群)の症状は多岐にわたりますが、吐き気や胃の不快感も比較的多くの方に見られるつらい症状の一つです。
なぜ生理前に吐き気が起こるのでしょうか?いつ頃から症状が出やすいのでしょうか?そして、そのつらい吐き気にはどのように対処すれば良いのでしょうか?
さらに、妊娠初期症状との違いについても気になりますよね。
この記事では、PMSによる吐き気のメカニズムや原因、症状が出やすい時期、効果的なセルフケアや市販薬、そして専門医に相談すべきタイミングまで、詳しく解説します。
この情報を通して、あなたのPMSによる吐き気のつらさが少しでも和らぎ、毎月をより快適に過ごすためのヒントを見つけていただければ幸いです。
一人で抱え込まず、まずは原因を知り、適切な対処法を試してみましょう。
PMSで吐き気が起こるメカニズムと原因
PMSによる吐き気は、気のせいでも、単なるストレスだけでもありません。
女性の体のメカニズム、特にホルモンバランスの大きな変動が深く関わっています。
生理前に周期的に吐き気が起こる場合、その多くは月経前症候群(PMS)の一症状として考えられます。
黄体ホルモン分泌の影響
PMSの主な原因と考えられているのが、生理周期における女性ホルモンの変動、特に黄体ホルモン(プロゲステロン)の急激な変化です。
生理周期は、大きく分けて月経期、卵胞期、排卵期、黄体期に分けられます。
このうち、PMSの症状が現れるのは主に排卵後から生理開始までの約2週間である「黄体期」です。
黄体期には、排卵後に形成された黄体から大量のプロゲステロンが分泌されます。
このプロゲステロンは妊娠を維持するためのホルモンであり、様々な働きがあります。
しかし、その働きの中には、PMSの様々な不快症状を引き起こすものも含まれています。
プロゲステロンは、胃腸の平滑筋(筋肉)を緩める作用があります。
これは、妊娠した場合に子宮の収縮を抑えるための重要な働きですが、胃や腸の平滑筋にも作用してしまいます。
その結果、胃腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなり、消化に時間がかかったり、食べ物が胃の中に長く留まったりするようになります。
これが、胃もたれ、胃のむかつき、膨満感、そして吐き気といった症状を引き起こすメカニズムの一つです。
さらに、プロゲステロンは脳の神経伝達物質、特にセロトニンのバランスにも影響を与えると考えられています。
セロトニンは精神状態を安定させるだけでなく、胃腸の働きにも深く関わっています。
プロゲステロンの影響でセロトニンのバランスが崩れると、自律神経の乱れが生じ、これが胃腸の不調や吐き気に繋がることがあります。
脳と胃腸は「脳腸相関」と呼ばれる密接な関係にあり、脳がストレスやホルモンの影響を受けると、胃腸の働きにも影響が出やすいのです。
胃腸の動きが鈍くなる
前述の通り、黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用によって、胃や腸の筋肉がリラックスし、蠕動運動が低下します。
蠕動運動とは、食べ物を消化・吸収しながら腸内を移動させるための波打つような動きのことです。
この動きが鈍くなると、食べたものがスムーズに消化管を通過できなくなります。
特に胃では、食べ物が通常よりも長く滞留するため、消化不良を起こしやすくなります。
胃の内容物が適切に排出されないことで、胃もたれや胃の重さを感じるようになり、これがむかつきや吐き気へと繋がっていくのです。
腸の動きが鈍くなると、便秘を引き起こしやすくなります。
お腹の張りやガスの発生も増え、これらが胃を圧迫したり、全体的な消化管の不快感を増強させたりして、吐き気を助長する可能性があります。
人によっては、胃の動きが鈍くなることとは逆に、腸の動きが過敏になり、下痢や腹痛が起こることもあります。
どちらにしても、胃腸の機能が不安定になることが、PMSの吐き気の大きな要因の一つと言えます。
また、ストレスや不規則な生活習慣は、自律神経のバランスをさらに乱し、ホルモンの影響を受けやすい黄体期においては、胃腸の不調をより悪化させる可能性があります。
心身の不調が複合的に作用し、吐き気をはじめとする様々なPMS症状を強めるのです。
むくみとお腹の張りの関連
黄体ホルモン(プロゲステロン)には、体内に水分や塩分をため込みやすくする作用もあります。
この作用によって、生理前にはむくみやすくなります。
顔や手足のむくみを感じやすいですが、実は消化管を含む体内のあらゆる組織がむくむ可能性があります。
特に、胃や腸の壁がむくむと、胃腸の空間が狭くなったり、動きがさらに制限されたりすることが考えられます。
これにより、お腹の張り(腹部膨満感)が強まることがあります。
お腹が張ることで、物理的に胃が圧迫され、その結果として吐き気や胃の不快感が増強されることがあります。
また、全身のむくみは体重増加として現れることもあり、体が重くだるく感じられる一因となります。
このような全身の倦怠感も、吐き気という症状と組み合わさることで、より一層つらさが増す可能性があります。
むくみは、単に見た目の問題だけでなく、体の内側からも不調を引き起こす可能性があることを理解しておきましょう。
このように、PMSによる吐き気は、黄体ホルモンの影響による胃腸の運動機能低下、セロトニンバランスの乱れ、そして体内水分貯留によるむくみやお腹の張りなど、複数の要因が複雑に絡み合って発生すると考えられています。
これらのメカニズムを知ることで、単なる「気のせい」ではない、体に起こっている変化なのだと理解でき、適切な対処法を見つけやすくなります。
いつから?PMSの吐き気が出やすい時期
PMSの症状、特に吐き気は、生理周期の特定の時期に現れるのが特徴です。
この「いつから」という時期を把握することは、PMSであるかどうかの判断や、事前の心構え、対策を立てる上で非常に重要になります。
生理前の一般的な症状期間
PMSの症状が現れるのは、一般的に生理開始の3~10日前と言われています。
この期間は、女性の生理周期における黄体期にあたります。
排卵が起こった後、卵巣に残った卵胞は黄体という組織に変化し、そこから黄体ホルモン(プロゲステロン)が大量に分泌され始めます。
同時に、卵胞ホルモン(エストロゲン)も分泌されますが、特に黄体期後半に向けて、ホルモンバランスが妊娠準備のために大きく変動します。
もし妊娠が成立しなかった場合、黄体は萎縮し、プロゲゲステロンとエストロゲンの分泌が急激に低下します。
このホルモンレベルの低下が引き金となり、子宮内膜が剥がれて生理が始まります。
PMSの症状は、この黄体期、特にホルモンレベルが変動している間に現れます。
吐き気も例外ではなく、排卵日を過ぎた頃から感じ始める人もいれば、生理の1週間前、あるいは数日前になってから急に症状が強くなる人もいます。
この時期は個人差が非常に大きい部分です。
例えば、ある人は排卵日の2~3日後から胃のむかつきを感じ始め、生理が来るまでそれが続くかもしれません。
別の人は、生理のたった2~3日前になって初めて強い吐き気に襲われ、生理が始まると同時に症状が消えるかもしれません。
このように、症状が出始めるタイミングや持続期間は、一人ひとりの体の状態やその月のホルモンバランスによって異なります。
「いつから」という自分のパターンを知るためには、毎月の生理周期と体調の変化を記録する体調ダイアリーをつけるのがおすすめです。
基礎体温、生理が始まった日、排卵日と思われる日(基礎体温の変化や排卵検査薬で確認)、そして吐き気を含めたいろいろな体調の変化(いつから、どのくらいの程度か)を記録していくと、数ヶ月後には自分自身のパターンが見えてくるはずです。
症状がピークになる時期
PMSの症状、特に吐き気は、黄体期の中でも特定の時期に最も強くなる傾向があります。
一般的には、生理が始まる直前が最も症状が重くなりやすい時期と言われています。
これは、生理が始まる直前、妊娠が成立しなかったと体が判断し、黄体が急激に萎縮するためです。
黄体が萎縮すると、それまで大量に分泌されていたプロゲステロンとエストロゲンのレベルが急激に低下します。
このホルモンレベルの急激な低下が、PMSの様々な症状、特に精神的な症状や自律神経系の症状を強く引き起こすとされています。
吐き気も自律神経の乱れやセロトニンの影響が関与しているため、この時期にピークを迎えることが多いのです。
例えば、生理の5日前から吐き気を感じ始めたとして、最初のうちは軽いむかつき程度だったものが、生理前日や当日には強い吐き気や嘔吐感に変わる、といったパターンです。
しかし、このピークの時期も個人差があります。
生理の1週間前がピークで、生理が近づくにつれて少し楽になる人もいれば、生理が始まってからも数日間症状が続く人もいます。
重要なのは、症状が生理が始まるとともに自然に軽減していく、あるいは完全に消失するという点です。
これがPMSの定義の一つであり、他の病気による吐き気との大きな違いです。
自分の体調ダイアリーをつけて、吐き気が「いつから始まり」「いつ最もつらく」「いつ終わるのか」というパターンを把握することは、PMSへの理解を深め、症状が現れる時期に合わせて対策を講じる上で非常に有効です。
例えば、症状がピークになる時期に合わせて、予定を調整したり、休息を多めに取ったり、市販薬を準備したりといった具体的な行動に移しやすくなります。
PMSの吐き気以外にみられる主な症状
PMSは「月経前症候群」という名の通り、吐き気だけが現れるのではなく、身体的・精神的に非常に多様な症状が現れるのが特徴です。
吐き気と同時に他の症状も経験している方は多く、これらの症状が複合的に現れることで、心身ともに非常につらい状態になることがあります。
身体的な症状(頭痛、腹痛、だるさなど)
PMSで見られる身体的な症状は非常に多岐にわたります。
吐き気と関連してよくみられる症状には以下のようなものがあります。
頭痛はホルモンバランスの変動、特にエストロゲンの急激な増減が関わると考えられています。
セロトニンなどの神経伝達物質の変動も頭痛の一因となります。
吐き気を伴うことも多く、偏頭痛のような性質を持つこともあります。
腹痛は子宮や骨盤内の充血、プロスタグランジンという生理活性物質の増加などが原因と考えられます。
生理痛と似ていますが、生理が始まる前から現れるのが特徴です。
お腹の張りや便秘・下痢に伴う痛みもあります。
腰痛は腹痛と同様に、骨盤内の充血やホルモンの影響で腰回りの筋肉が緊張しやすくなることで起こり得ます。
冷えやむくみが悪化させることもあります。
むくみは体内に水分や塩分が溜まりやすくなることで、顔、手足、お腹などがむくみます。
これがお腹の張りや全身の倦怠感、体重増加につながります。
お腹の張り(腹部膨満感)は胃腸の動きの低下やむくみ、ガスの発生などが原因です。
胃や腸がパンパンになったような不快感があり、吐き気を助長することがあります。
乳房の張り・痛みは乳腺組織がホルモンの影響を受けてむくみやすくなることで起こります。
触ると痛むこともあります。
だるさ・倦怠感は全身のむくみ、ホルモンの影響、睡眠の質の低下、精神的なストレスなどが複合的に絡み合って起こります。
体が鉛のように重く感じられることもあります。
便秘または下痢はプロゲステロンによる胃腸の動きの鈍化が原因で便秘になりやすい一方、自律神経の乱れやストレスで腸が過敏になり下痢になることもあります。
食欲の変化は甘いものや特定のものを無性に食べたくなる(過食)こともあれば、食欲がなくなって吐き気が強くなることもあります。
これらの身体症状は、単独で現れることもありますが、いくつか組み合わさって現れることが多いです。
特に吐き気がある場合は、胃腸の不調(お腹の張り、便秘/下痢)や頭痛、全身のだるさなどを同時に感じている方が多い傾向にあります。
これらの症状全体がPMSの特徴を理解する上で重要になります。
精神的な症状(イライラ、不安、抑うつ)
PMSの症状は身体的なものだけでなく、精神的なものも非常に多く、つらいと感じる方が少なくありません。
精神的な症状も、黄体期のホルモン変動、特に脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、GABAなど)のバランスの変化が深く関わっていると考えられています。
これらの精神症状は、吐き気のような身体症状を悪化させる要因にもなり得ます。
PMSでよくみられる精神的な症状には以下のようなものがあります。
イライラ・怒りっぽくなる症状では、些細なことでカッとなったり、家族やパートナー、職場の同僚などに対して攻撃的になってしまったりします。
自分ではコントロールできないように感じて、後で自己嫌悪に陥ることもあります。
不安感は何かと心配になったり、漠然とした不安を感じたりします。
ネガティブな思考に囚われやすくなります。
気分の落ち込み・ゆううつ感では、普段は楽しいことでも楽しめなくなったり、何事にもやる気が出なくなったりします。
涙もろくなることもあります。
重症な場合は、月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれる、より深刻な精神症状を伴う場合があります。
集中力・判断力の低下により、仕事や勉強に集中できなくなったり、普段なら簡単に決められることも決められなくなったりします。
睡眠障害では、なかなか寝付けない(不眠)こともあれば、反対に異常に眠くなる(過眠)こともあります。
睡眠のリズムが乱れると、日中のだるさや倦怠感がさらに強まります。
無気力・何もしたくないと感じ、何もかも面倒になり、日常生活を送るのがつらく感じられます。
情緒不安定になり、感情の波が激しく、喜怒哀楽がジェットコースターのように変化します。
これらの精神症状も、生理前数日~1週間程度に現れ、生理が始まるとともに軽減・消失するというパターンをたどります。
精神的なつらさは、体の不調、特に吐き気と組み合わさると、より生活の質を著しく低下させる可能性があります。
例えば、吐き気がひどくて何も食べられない・飲めない、しかし精神的に落ち込んで誰にも相談できない、といった悪循環に陥ることもあります。
PMSの症状は本当に多岐にわたるため、吐き気以外にも気になる症状がないか、自分の心身の変化をよく観察してみることが大切です。
これらの症状が毎月周期的に現れることに気づくことが、PMSを理解し、適切な対処法を見つけるための第一歩となります。
PMSのつらい吐き気を和らげる対処法
PMSによる吐き気は非常につらいものですが、日常生活の中でできるセルフケアや、必要に応じて市販薬を利用することで、症状をある程度和らげることが可能です。
自分の体に合った方法を見つけて、実践してみましょう。
日常でできるセルフケア
セルフケアは、PMS症状全般を軽減し、吐き気に対処するための基本となります。
特別なことではなく、普段の生活習慣を見直すことが重要です。
食生活の見直し
胃腸の動きが鈍くなっている黄体期には、特に消化に良い、胃に優しい食事を心がけることが大切です。
消化の良いものを選びましょう。
お粥、うどん、よく煮込んだ野菜、脂身の少ない肉や魚など、胃に負担をかけにくいものを選びましょう。
香辛料や酸味の強いものは避け、薄味で調理するのがおすすめです。
食事の量を減らし、回数を増やす(例:1日3食を5~6回に分けて食べる)ことで、胃腸への負担を軽減できます。
空腹時間が長すぎると気持ち悪くなる場合もあるので、軽くつまめるものを準備しておくと安心です。
刺激物を避けましょう。
カフェイン(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)、アルコール、タバコ、辛いもの、脂っこいもの、冷たい飲み物などは胃腸を刺激し、吐き気を悪化させる可能性があります。
黄体期にはできるだけ控えるか、量を減らすようにしましょう。
栄養バランスを意識しましょう。
PMSの症状緩和には、ビタミンB6、マグネシウム、カルシウム、オメガ3脂肪酸などが有効と言われています。
これらの栄養素を積極的に含む食品(全粒穀物、豆類、ナッツ、魚、緑黄色野菜、乳製品など)をバランス良く摂取することを心がけましょう。
これらの栄養素を補うためにサプリメントを利用するのも一つの方法ですが、医師や薬剤師に相談してからにしましょう。
水分を十分に摂りましょう。
むくみが吐き気の一因となることもあるため、適切な水分摂取は重要です。
ただし、一度に大量に飲むのではなく、こまめに少しずつ飲むのがおすすめです。
冷たい水ではなく、常温や温かい飲み物を選ぶと胃腸に優しいです。
ハーブティー(カモミールやジンジャーなど、胃のむかつきに良いとされる香り)もリラックス効果とともに吐き気の緩和に役立つかもしれません。
適度な運動と休息
規則正しい生活は、自律神経を整え、ホルモンバランスの乱れを和らげるのに役立ちます。
適度な運動は激しい運動は必要ありません。
ウォーキング、ジョギング、ヨガ、ストレッチ、水泳など、軽く体を動かす有酸素運動がおすすめです。
血行を促進し、むくみを軽減したり、ストレスを解消したりする効果が期待できます。
特にヨガやストレッチは、体の緊張をほぐし、リラックス効果も高いです。
運動は毎日続けることが理想ですが、PMSのつらい時期は無理せず、体調が良い時に短時間でも行うようにしましょう。
十分な休息と睡眠は、体が疲れていると、PMS症状は悪化しやすくなります。
黄体期にはいつも以上に休息を意識しましょう。
夜は質の高い睡眠を十分にとることが大切です。
寝る前にスマホやパソコンの使用を控えたり、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったり、リラックスできる音楽を聴いたりするなど、入眠しやすい環境を整えましょう。
規則正しい時間に寝起きすることも、体内時計を整え、自律神経の安定に繋がります。
昼寝や短い休憩も大切です。
症状が重い時は、無理せず昼寝をしたり、仕事の合間に短い休憩をとったりすることも大切です。
横になって体を休めるだけでも、吐き気が和らぐことがあります。
ストレス軽減方法
ストレスはPMSを悪化させる大きな要因の一つです。
黄体期は特にストレスを感じやすいため、意識的にストレスを軽減する工夫を取り入れましょう。
リラクゼーションを取り入れましょう。
アロマテラピー(ペパーミントやジンジャーは吐き気に良いとされる香り)、半身浴、マッサージ、瞑想、深呼吸などは、心身をリラックスさせるのに役立ちます。
好きなことをする時間を作りましょう。
趣味に没頭する、映画を見る、音楽を聴く、読書をするなど、自分が心から楽しめる時間を持つことは、気分転換になりストレス解消に繋がります。
ジャーナリング(書き出し)で、不安やイライラ、吐き気など、感じていることを紙に書き出すことで、気持ちを整理し、客観的に捉えることができます。
溜め込まずに外に出すことが大切です。
信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。
家族、友人、パートナーなど、信頼できる人に自分のつらい気持ちや症状を話してみましょう。
話を聞いてもらうだけでも心が軽くなることがあります。
完璧主義を手放すことも重要です。
PMSの時期は、いつも通りに家事や仕事をこなせないこともあります。
自分を責めすぎず、「この時期は仕方ない」と割り切ることも大切です。
周囲に協力を求めることも検討しましょう。
体調ダイアリーを活用して、自分の体調の波を把握することで、「このつらさはPMSのせいだ」と理解でき、必要以上に不安になったり、自分を責めたりすることを減らせます。
市販薬の選び方と注意点
セルフケアだけでは吐き気が十分緩和されない場合や、症状が比較的重い場合は、市販薬の利用を検討するのも一つの方法です。
ただし、市販薬を選ぶ際にはいくつかの注意点があります。
市販の吐き気止めとしては、胃のむかつきや吐き気に特化した市販薬があります。
これらの薬には、胃の動きを調整する成分(例:メトクロプラミドなど)や、胃酸を抑える成分、消化を助ける成分などが含まれています。
購入する際は、薬剤師にPMSによる吐き気であることを伝え、自分の症状に合った薬を選んでもらいましょう。
ただし、吐き気止めの中には眠気を誘発するものや、特定の疾患(緑内障など)がある場合には使えないものもあるため、注意が必要です。
漢方薬としては、PMSの症状全般に対して、体質改善を目指す漢方薬が有効な場合があります。
PMSによく使われる漢方薬には、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、桂枝茯苓丸(ケイシ茯苓丸)などがあります。
これらの漢方薬は、個人の体質や症状の現れ方によって使い分けられます。
例えば、イライラや精神的な症状が強い場合は加味逍遙散、冷えやむくみが強い場合は当帰芍薬散などが選ばれることがあります。
漢方薬は比較的穏やかに作用しますが、効果が出るまでに時間がかかる場合や、体質に合わない場合もあります。
購入する際は、薬剤師に相談し、自分の体質や症状を詳しく伝えてアドバイスをもらいましょう。
PMS専用の市販薬もあり、PMSの複数の症状(吐き気、頭痛、腹痛、精神症状など)に対応するために作られています。
これらには、鎮痛成分、精神安定作用のある成分、利尿作用のある成分などが配合されている場合があります。
パッケージや説明書きをよく読み、自分の悩んでいる症状に合っているか確認しましょう。
栄養補助食品・サプリメントとして、ビタミンB6、マグネシウム、チェストツリー(アグニ)、月見草オイルなどがPMS症状緩和に有効であるとして販売されています。
これらは医薬品ではないため、効果はマイルドですが、長期的に体調を整える目的で使用されることがあります。
ただし、効果には個人差があり、過剰摂取は副作用の原因になることもありますので、推奨摂取量を守りましょう。
市販薬を使用する上での注意点:
- 用法用量を必ず守りましょう。効果を高めようと規定量以上に服用したり、服用間隔を守らなかったりすると、副作用のリスクが高まります。
- 他の薬との飲み合わせに注意が必要です。現在服用している他の薬(処方薬、他の市販薬、サプリメントなど)がある場合は、飲み合わせに問題がないか、必ず医師や薬剤師に確認してください。特に、胃腸薬、鎮痛剤、風邪薬など、成分が重複したり相互作用を起こしたりする可能性があります。
- アレルギーを確認しましょう。過去に薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、配合成分をよく確認してください。
- 症状が改善しない・悪化する場合は中止しましょう。市販薬をしばらく使用しても症状が改善しない、またはかえって悪化した場合は、使用を中止し、医療機関を受診しましょう。自己判断で長期間使用し続けるのは避けましょう。
- 妊娠中・授乳中の使用は、安全性が確立されていない薬もあります。必ず医師や薬剤師に相談してから使用してください。
セルフケアは日々の積み重ねが大切です。
自分の体と向き合いながら、できることから少しずつ始めてみましょう。
それでもつらい場合は、市販薬を賢く利用することも有効な手段です。
ただし、迷ったり不安だったりする場合は、いつでも専門家に相談することを忘れないでください。
もしかして妊娠?PMSの吐き気と妊娠初期症状の違い
PMSによる吐き気と、妊娠初期にみられる「つわり」による吐き気は、症状が現れる時期や性質が似ているため、「もしかして妊娠かも?」と混乱する女性は非常に多いです。
両者を見分けるポイントを知っておくことは、不要な不安を軽減したり、早期に妊娠に気づいたりする上で役立ちます。
症状の出現時期と持続期間の比較
PMSの吐き気と妊娠初期症状の吐き気の最も重要な違いは、症状が現れる時期と持続期間です。
症状の種類 | 症状の出現時期(一般的) | 症状の持続期間(一般的) |
---|---|---|
PMSによる吐き気 | 生理開始の3~10日前(黄体期) | 生理が始まるとともに軽減または消失する |
妊娠初期の吐き気 | 生理予定日を過ぎた頃(妊娠4~5週頃)から現れ始めることが多い | 妊娠週数が進むにつれて変化し、妊娠12~16週頃に落ち着くことが多い |
PMSによる吐き気は、あくまで生理周期の一部として、生理が始まるまでの黄体期に限定して現れます。
生理が始まって経血が出始めると、それまで高かった黄体ホルモンレベルが急激に低下し、それに伴って吐き気を含むPMS症状も自然と和らいでいきます。
生理が終了する頃には、ほとんどの場合、症状は完全に消えているはずです。
一方、妊娠初期の吐き気(つわり)は、受精卵が着床し、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という妊娠初期に分泌されるホルモンのレベルが上昇し始める頃から現れることが多いです。
これは、生理予定日を過ぎた頃、つまり通常生理が来るはずだった時期以降に当たります。
生理が予定通り来ないことに気づき、その後に吐き気などの症状が現れるパターンが多いでしょう。
つわりの症状は、一般的に妊娠8~10週頃にピークを迎え、安定期に入る妊娠12~16週頃には徐々に落ち着いてくることが多いですが、これも個人差が非常に大きく、出産までつわりが続く人もいれば、全くつわりがない人もいます。
重要なのは、生理が予定通り来なかった場合に、吐き気などの症状が続いているかどうかです。
PMSであれば生理が始まると症状は消えるため、「生理が来ていないのに吐き気が続いている」場合は、妊娠の可能性をより強く疑うべきサインとなります。
PMSと妊娠を見分けるポイント
症状の出現時期と持続期間の比較以外にも、PMSと妊娠初期症状を見分けるためのいくつかのポイントがあります。
生理が予定通りに来たかどうかが最もシンプルで分かりやすい判断基準です。
生理予定日を1週間~10日過ぎても生理が来ない場合は、妊娠の可能性を強く疑うべきです。
PMSの場合は、生理が始まることで症状が和らぐはずです。
基礎体温をつけている場合、妊娠していると排卵後の高温期が通常よりも長く(2週間以上)続きます。
PMSの場合も黄体期は高温期になりますが、生理が始まると体温は低下し低温期に入ります。
高温期が長く続いている場合は、妊娠の可能性が高いサインです。
その他の症状の違いとして、PMSと妊娠初期症状には共通する症状(吐き気、乳房の張り、眠気、だるさ、情緒不安定など)が多いですが、妊娠初期に特有の症状や、症状の性質に違いが見られることがあります。
妊娠初期にごく少量の出血が見られることがあります。
生理とは異なり、少量で数日で終わるのが特徴です(着床出血)。
妊娠初期は嗅覚が過敏になり、特定の匂い(炊き立てのご飯の匂い、タバコの匂いなど)で吐き気を催すことがあります(匂いに敏感になる)。
特定の食べ物が突然嫌いになったり、酸っぱいものや特定の味が欲しくなったりすることがあります(特定の味覚の変化)。
子宮が大きくなり膀胱を圧迫することで、頻尿になることがあります(頻尿)。
これらの違いを表にまとめると以下のようになります。
症状 | PMS(黄体期) | 妊娠初期 |
---|---|---|
吐き気 | あり(生理前) | あり(生理予定日以降) |
生理 | 予定通り来る(または遅れる) | 予定通り来ない |
基礎体温 | 高温期→生理で低下 | 高温期が続く(2週間以上) |
乳房の変化 | 張り、痛み | 張り、痛み、乳首の色変化、モントゴメリー腺 |
だるさ | あり | あり |
眠気 | あり | あり(より強いことも) |
情緒不安定 | あり | あり |
腹痛・腰痛 | あり | あり(軽い生理痛様の痛み) |
むくみ | あり | あり |
食欲の変化 | あり(過食や特定の欲求) | あり(つわり、特定の欲求) |
着床出血 | なし | ありうる(少量) |
匂いに敏感 | あまりみられない | ありうる |
味覚の変化 | あまりみられない | ありうる |
頻尿 | あまりみられない | ありうる |
最終的に、妊娠しているかどうかを確実に判断するためには、妊娠検査薬を使用するのが最も確実です。
妊娠検査薬は、生理予定日を1週間過ぎた頃から正確な結果が得られるものが一般的です。
検査薬で陽性反応が出た場合は、早めに産婦人科を受診し、医師の診断を受けましょう。
PMSによる吐き気と妊娠初期症状は非常に似ているため、自己判断は難しいことも多いです。
もし不安な場合は、妊娠検査薬を試すか、婦人科で相談することをおすすめします。
吐き気がひどい、つらい時は病院へ
セルフケアや市販薬を試してもPMSによる吐き気が改善しない、あるいは日常生活に支障をきたすほどひどい場合は、我慢せずに医療機関を受診することが大切です。
専門医に相談することで、正確な診断を受け、より効果的な治療法を見つけることができます。
受診を検討すべきケース
以下のような場合は、自己判断せずに婦人科などの医療機関を受診することを強くお勧めします。
吐き気が日常生活に著しく影響している場合、食事がまともに摂れない、仕事や学校に行けない、家事ができないなど、吐き気があまりにひどく、普段通りの生活を送ることが困難な場合です。
セルフケアや市販薬で全く効果がない場合、食生活の見直しや休息、市販薬の使用など、自分でできる対策を試しても症状が全く改善しない場合です。
症状がPMSの期間以外にも続く場合、吐き気やその他の不調が、生理前の黄体期だけでなく、生理中や生理後も続く場合です。
これはPMS以外の病気が原因である可能性も考えられます。
症状が徐々に悪化している場合、毎月PMSのたびに吐き気がひどくなっている、他の症状も重くなってきている場合です。
精神的な落ち込みが非常に強い場合、吐き気に加えて、強い不安、うつ状態、希死念慮など、精神的に深刻な症状が見られる場合です。
月経前不快気分障害(PMDD)の可能性も考慮し、心療内科や精神科との連携が必要なこともあります。
他の重い病気が疑われる症状がある場合、PMS症状と同時に、発熱、激しい腹痛、体重の急激な減少、不正出血、強いめまい、意識障害など、他の病気が原因かもしれないと思われるような症状がある場合です。
症状のために誰にも会いたくない、家に引きこもりがちになる場合、PMSによる心身の不調が、社会生活や人間関係に悪影響を及ぼしている場合です。
PMSのつらさは個人差が大きく、またその時の体調や環境によっても変動します。
「これくらいで病院に行っていいのかな?」とためらってしまう人もいるかもしれませんが、PMSは病気であり、適切な治療によって症状を和らげることが可能です。
我慢してつらい期間を過ごすよりも、専門家のサポートを受けることで、生活の質を向上させることができます。
婦人科での相談・治療法
婦人科を受診する際は、症状について詳しく医師に伝えることが大切です。
いつから、どのくらいの期間、どのような吐き気が起こるのか、吐き気以外にどのような症状があるのか(身体的・精神的症状の両方)、生理周期との関連性、試したセルフケアや市販薬の効果などを具体的に伝えられるように準備しておくとスムーズです。
体調ダイアリーをつけている場合は、それを持参すると非常に役立ちます。
医師は問診や必要に応じて検査(血液検査など)を行い、PMSであるかどうか、あるいは他の病気の可能性はないかなどを診断します。
PMSと診断された場合、個々の症状の重さや悩みに合わせて、以下のような治療法が検討されます。
低用量ピル(OC/LEP)はPMS治療の第一選択肢の一つです。
低用量ピルを服用することで、排卵を抑制し、生理周期中のホルモン変動を穏やかにすることができます。
これにより、黄体期に現れる様々なPMS症状、特に精神的な症状や身体的な症状(吐き気、頭痛、腹痛、むくみなど)を軽減する効果が期待できます。
吐き気自体が副作用として現れる場合もありますが、多くの場合は飲み続けるうちに改善します。
医師と相談しながら、自分に合った種類のピルを見つけることが重要です。
漢方薬は体質や症状に合わせて様々な漢方薬が処方されます。
加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸などがよく用いられますが、冷え性、胃腸の弱さ、ストレス傾向など、個々の体質を考慮して処方が決められます。
漢方薬は体全体のバランスを整えることで症状の緩和を目指します。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、PMSの中でも特に精神症状(イライラ、不安、抑うつなど)が強い場合や、吐き気などの身体症状にも精神的な要因が強く関わっている場合に処方されることがあります。
セロトニンの働きを調整することで、脳内の神経伝達物質バランスを整え、症状を改善します。
SSRIは、PMSの症状が現れる黄体期だけ服用する(間欠療法)ことも、毎日服用する(連続療法)こともあります。
対症療法薬として、吐き気止め、鎮痛剤(頭痛や腹痛に対して)、精神安定剤、利尿剤など、特定のつらい症状を和らげるための薬が処方されることがあります。
これらの薬は、症状が特につらい時に一時的に使用することで、黄体期を乗り越える助けとなります。
GnRHアゴニストは、重症で他の治療法では効果が得られないPMS/PMDDに対して、一時的に卵巣の働きを完全に抑え、生理を止める治療法です。
更年期のような状態になるため、骨量減少などの副作用のリスクもあり、使用期間は限定的です。
ライフスタイル指導では、食事、運動、睡眠、ストレスマネジメントなどのセルフケアについて、医師や看護師から具体的なアドバイスを受けることができます。
どの治療法を選択するかは、医師があなたの症状の重さ、年齢、他の病気の有無、ライフスタイルなどを総合的に判断して決定します。
様々な選択肢があることを知っておき、医師とよく相談して、自分に最も合った治療法を見つけましょう。
婦人科医は、PMSのつらさを理解し、サポートしてくれる専門家です。
一人で悩まず、安心して相談してください。
まとめ:つらいPMSの吐き気は適切に対処しよう
PMSによる吐き気は、生理前の黄体期にホルモンバランスが大きく変動することで起こる、多くの女性が経験するつらい症状です。
黄体ホルモンの影響で胃腸の動きが鈍くなったり、むくみが生じたりすることが、吐き気の主な原因と考えられています。
症状が現れる時期は生理前3~10日程度で、生理が始まるとともに自然に改善するのが一般的です。
PMSの吐き気は、頭痛、腹痛、だるさといった身体的な症状や、イライラ、不安、落ち込みといった精神的な症状と併発することも多く、複合的なつらさを感じることが少なくありません。
このつらい吐き気に対しては、まず日常生活の中でできるセルフケアを試してみましょう。
胃に優しい食生活を心がけ、適度な運動を行い、十分な休息をとり、積極的にストレスを軽減することが重要です。
これらのセルフケアは、PMS全体の症状緩和にも繋がります。
セルフケアで十分な効果が得られない場合は、市販の吐き気止めや漢方薬の利用も検討できます。
ただし、使用する際は必ず用法用量を守り、他の薬との飲み合わせや体質への適合に注意が必要です。
迷う場合は薬剤師に相談しましょう。
生理前の吐き気は、時に妊娠初期症状(つわり)と紛らわしいことがあります。
妊娠の可能性が少しでもある場合は、症状が現れる時期(生理予定日を過ぎても続くかどうか)や、基礎体温の変化、妊娠初期特有の他の症状(着床出血、匂いに敏感になるなど)を注意深く観察しましょう。
最も確実なのは、生理予定日を1週間過ぎた頃に妊娠検査薬を試すことです。
セルフケアや市販薬を試しても吐き気がひどく改善しない場合、日常生活に支障が出ている場合、あるいは他の重い症状が伴う場合は、我慢せずに婦人科などの医療機関を受診してください。
医師に相談することで、正確な診断を受け、低用量ピル、漢方薬、SSRIなど、症状に合わせた治療を受けることができます。
PMSの吐き気は、決して「気のせい」ではありません。
体のメカニズムによって引き起こされる、治療可能な症状です。
一人で抱え込まず、自分の体の声に耳を傾け、適切な対処法を見つけることが大切です。
この記事で紹介した情報を参考に、できることから始めて、必要であれば専門家のサポートを得ながら、生理前のつらい時期を少しでも快適に過ごせるようになることを願っています。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的アドバイスを提供するものではありません。
個々の症状や体調については必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
本記事の情報に基づいてご自身の判断で治療を行うことによって生じた結果について、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。