生理前になると、おりものの状態がいつもと違うと感じる女性は少なくありません。「生理前おりものはいつから変化するの?」「量や色はどうなるの?」「もしかして妊娠の兆候?」など、さまざまな疑問や不安を感じることもあるでしょう。
この記事では、女性の体と密接に関わる生理前おりものについて、正常な変化から注意すべき異常なサインまで、詳しく解説します。自分の体の変化を正しく理解し、健やかな毎日を送るための一助となれば幸いです。
生理周期と女性ホルモン、おりものの変化
おりものは、子宮頸管や膣の分泌腺から出る酸性の液体で、膣内を清潔に保つ自浄作用や、性交渉時に精子がスムーズに子宮内へ到達するのを助ける潤滑剤としての役割があります。また、妊娠をサポートする役割もあるとされています(【生理前】おりものの役割や特徴・時期別の変化や注意点を解説)。おりものの量や状態は、女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌バランスによって周期的に変化します。
卵胞期のおりもの
生理が終わった後から排卵期までの期間を卵胞期と呼びます。この時期はエストロゲンの分泌量が徐々に増えていきます。おりものは比較的量が少なく、さらっとした状態です。
排卵期のおりもの
排卵期になると、エストロゲンの分泌量がピークに達します。この影響で、おりものの量は最も多くなり、透明で粘り気があり、指で伸ばすとよく伸びる卵白のような状態になります。これは、精子が子宮内に進入しやすくするための変化です。
黄体期(生理前)のおりもの
排卵が終わると黄体期に入り、プロゲステロンの分泌量が増加し、エストロゲンの分泌量は減少します。この時期が、いわゆる「生理前」にあたります。生理前おりものは、プロゲステロンの影響で量が減少し、白っぽく濁り、粘り気が強くなるのが一般的です。下着につくと乾燥して黄色っぽく見えることもあります。生理が近づくにつれて、少量の経血が混じり、茶色っぽいおりものが見られることもあります。
生理前おりものの特徴
生理前おりものについて、具体的な変化や気になるポイントを詳しく見ていきましょう。
生理前おりもの いつから?何日前?
生理前おりものの変化は、一般的に排卵後から次の生理が始まるまでの「黄体期」に見られます。生理予定日の1週間~数日前くらいから、おりものの変化に気づく方が多いようですが、これには個人差があります。
生理前おりもの 量の変化(増える/減る)
排卵期に比べると、生理前おりものの量は減少するのが一般的です。しかし、個人差があり、生理直前になって一時的に量が増えると感じる人もいます。これは、子宮内膜が剥がれ落ちる準備段階として、子宮頸管からの分泌物が増えるためと考えられています(【生理前】おりものの役割や特徴・時期別の変化や注意点を解説)。
生理前おりもの 色の変化(白い/黄色/黄緑/茶色)
生理前おりものの色は、通常白濁しているか、やや黄色味がかっていることが多いです。
- 白いおりもの: 乳白色やクリーム色で、粘り気のあるおりものは、生理前の正常な状態です。
- 黄色いおりもの: 生理前にはよく見られる色の一つです。下着についたおりものが酸化して黄色く見えることもあります。ただし、鮮やかな黄色や濃い黄色で、他の症状(かゆみ、悪臭など)を伴う場合は感染症の可能性も考えられます。
- 黄緑色のおりもの: 感染症のサインである可能性が高いです。かゆみや悪臭を伴う場合は、早めに婦人科を受診しましょう。
- 茶色いおりもの: 生理が始まる数日前に見られる場合、古い経血が混じっていることが考えられます。これは「月経前のおしるし」のようなもので、特に心配ないことが多いです。ただし、生理期間以外に茶色いおりものが続く場合は、不正出血の可能性もあるため注意が必要です。
生理前おりもの 性状の変化(ドロッ/水っぽい/尿漏れみたい)
生理前おりものは、プロゲゲステロンの影響で粘り気が増し、ドロッとした状態になるのが一般的です。人によっては、生理が近づくと少し水っぽくなると感じることもあります。
「尿漏れみたい」と感じるほど水っぽいおりものが続く場合は、妊娠初期の兆候である可能性や、感染症の可能性も考えられます。ただし、生理前の一時的なホルモンバランスの変化で水っぽくなることもあります。
生理前おりもの ニオイの変化
健康なおりものは、無臭か、少し甘酸っぱいような乳酸菌のニオイがすることがあります。生理前は、ホルモンバランスの変化や経血が混じることで、普段よりもニオイが強くなったり、鉄っぽいニオイがしたりすることがあります。ニオイがきつくなる変化が見られることもあります(【生理前】おりものの役割や特徴・時期別の変化や注意点を解説)。しかし、明らかな悪臭(魚が腐ったようなニオイなど)がする場合は、感染症の可能性があります。
生理前おりものと妊娠可能性
生理前のおりものの変化は、妊娠初期のおりものの変化と似ている部分もあり、妊娠の可能性について気になる方も多いでしょう。
生理前おりもので妊娠がわかる?
結論から言うと、生理前おりものの変化だけで妊娠を確実に判断することは非常に困難です。妊娠初期のおりものの変化は、生理前のおりものの変化と非常によく似ており、個人差も大きいためです。妊娠の有無を正確に知るためには、生理予定日を1週間程度過ぎても生理が来ない場合に、妊娠検査薬を使用するか、産婦人科を受診することが最も確実な方法です。
妊娠初期のおりものの特徴
妊娠すると、女性ホルモンの分泌量が大きく変化し、おりものにも影響が出ます。妊娠初期のおりものの特徴としては、以下のようなものが見られることがあります。
- 量が増える: エストロゲンの影響で、おりものの量が増えることがあります。
- 水っぽくなる: サラサラとした水っぽいおりものになることがあります。
- 白っぽく濁る: いつもより白っぽく濁ったおりものが出ることがあります。
- においが変わる: 普段と違うにおいを感じることがありますが、これは個人差が大きいです。
- 着床出血: 受精卵が子宮内膜に着床する際に、少量の出血(ピンク色や茶色のおりもの)が見られることがあります。これは生理予定日の少し前や予定日頃に起こることが多く、数日間で治まるのが一般的です。
これらの変化は、生理前の変化と区別がつきにくいことが多いです。
生理前おりものが増える場合
生理前おりものが増える原因としては、妊娠の可能性のほかに、ホルモンバランスの乱れや、膣炎などの感染症といったことも考えられます。生理周期に伴う正常な変化であることもありますが、普段と違うと感じたり、他の気になる症状(かゆみ、悪臭、腹痛など)があったりする場合は、自己判断せずに婦人科で相談しましょう。
生理前おりものが減る/ない場合
黄体期(生理前)は、プロゲステロンの影響でおりものの量が減るのが一般的ですので、生理前おりものが減ったり、ほとんどないと感じたりしても、それ自体がすぐに異常というわけではありません。しかし、極端に膣内が乾燥してヒリヒリする、性交痛があるなどの場合は、萎縮性膣炎など他の原因も考えられるため、婦人科医に相談することをおすすめします。
こんな生理前おりものには注意!異常なサイン
生理前のおりものの多くは生理的な変化ですが、中には病気のサインが隠れていることもあります。以下のようなおりものの変化が見られた場合は、注意が必要です。
黄色・黄緑色・灰色のおりもの
鮮やかな黄色、膿のような黄色、黄緑色、灰色がかったおりものは、細菌性膣症やトリコモナス膣炎、クラミジア感染症などの性感染症の可能性があります。
膿のようなおりもの
膿のようなドロッとしたおりものが出る場合は、淋菌感染症などの可能性も考えられます。下腹部痛や発熱を伴うこともあります。
魚のようなきついニオイ
おりものから生臭い、魚が腐ったような強いニオイがする場合は、細菌性膣症の典型的な症状です。
かゆみや痛みを伴う場合
外陰部や膣にかゆみ、灼熱感、痛みなどを伴う場合、カンジダ膣炎やトリコモナス膣炎、接触性皮膚炎(かぶれ)などが考えられます。
不正出血が混じる場合
生理の直前や直後に少量の茶色いおりものが出るのは問題ないことが多いですが、生理期間以外に鮮血が混じったり、茶色いおりものがダラダラと続いたりする場合は、不正出血の可能性があります。子宮頸がん、子宮体がん、子宮頸管ポリープ、ホルモンバランスの乱れなど、さまざまな原因が考えられます。
異常なおりものから考えられる病気
以下は、異常なおりものが見られる場合に考えられる代表的な病気です。分かりやすく表にまとめました。
考えられる病気 | おりものの特徴 | その他の症状 |
---|---|---|
カンジダ膣炎 | 白くポロポロとしたカッテージチーズ状や酒粕状 | 強いかゆみ |
細菌性膣症 | 灰色がかった水っぽい | 魚の腐ったような強いニオイ、かゆみは軽度か、ないことも |
トリコモナス膣炎 | 黄緑色の泡状 | 強い悪臭、外陰部や膣のかゆみ・痛み |
クラミジア感染症 | 増加、水っぽい、膿状 | 下腹部痛。ただし、無症状のことも多い |
淋菌感染症 | 黄色い膿状、増加 | 下腹部痛、排尿痛。無症状の場合もある |
子宮頸管ポリープ | おりものに血が混じる、茶色いおりもの | 不正出血(性交後出血など) |
子宮頸がん・子宮体がん | 水っぽい、血性(血が混じる)など | 不正出血(閉経後の出血など)、進行すると下腹部痛、排尿時の異常など |
これらの症状に気づいたら、早めに婦人科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
生理前おりものに関するよくある質問
生理前なのにおりものがないのは異常?
黄体期(生理前)は、一般的におりものの量が少なくなる時期です。そのため、量が少ない、あるいはほとんどないと感じること自体は、必ずしも異常ではありません。ただし、膣の乾燥感が強く、日常生活で不快感(ヒリヒリ感、性交痛など)がある場合は、一度婦人科で相談してみるのが良いでしょう。
おりものシートは毎日使ってもいい?
おりものシートは、下着の汚れを防ぎ、清潔を保つのに役立ちます。基本的には毎日使用しても問題ありません。ただし、長時間同じものを使用し続けたり、通気性の悪い製品を選んだりすると、デリケートゾーンが蒸れてかぶれや雑菌の繁殖を引き起こし、かえって感染症のリスクを高めることがあります。
使用する場合は、こまめに取り替える(1日に2~3回以上、トイレに行くたびなど)、通気性の良い素材のものを選ぶ、肌に合わないと感じたら使用を中止するなどの工夫をしましょう。特に必要性を感じないときは、無理に使用しなくても構いません。
まとめ:気になるおりものは専門家へ相談を
生理前おりものの変化は、多くの女性が経験する自然な現象です。しかし、その中には注意すべきサインが隠れていることもあります。普段のおりものの状態をよく観察し、色や量、ニオイ、性状などに「いつもと違うな」「何かおかしいな」と感じることがあれば、自己判断せずに婦人科を受診しましょう。
特に、強いかゆみや痛み、悪臭、膿のようなおりもの、不正出血などを伴う場合は、早めの受診が大切です。医師に相談することで、適切な診断と治療につながり、安心して毎日を過ごすことができるようになります。
免責事項:この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師または専門の医療機関にご相談ください。