MENU

妊娠中の出血は大丈夫?色・量・時期別の原因と対処法【医師監修】

妊娠中の出血は、多くの妊婦さんが経験する可能性があり、不安を感じる出来事の一つです。
特に妊娠初期には「流産では…」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、出血があっても必ずしも深刻な状態とは限りません。
中には心配のない生理的な出血や、適切な処置で妊娠を継続できるケースもあります。
大切なのは、出血の原因や状態を正しく理解し、冷静に対処することです。

この記事では、妊娠中の出血について、時期別の原因や注意点、出血の色や量から考えられること、そして出血があった時にどのように対処すべきかなどを、医師監修のもと詳しく解説します。
ご自身の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。

目次

妊娠初期の出血はなぜ起こる?

妊娠初期(妊娠13週まで)は、お腹の赤ちゃんがまだ小さく不安定な時期です。
この時期に出血が見られることは少なくありません。
出血の原因はさまざまですが、多くの場合、子宮や胎盤がまだ発達段階にあることや、妊娠ホルモンの影響などが関係しています。

妊娠初期の出血は、流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)といった心配な状態のサインである可能性もありますが、そうではないケースも多くあります。
原因を正しく理解することが、不安を和らげる第一歩となります。

妊娠初期によくある出血「着床出血」とは

妊娠が成立するためには、受精卵が子宮内膜に潜り込む「着床」というプロセスが必要です。
この着床の際に、子宮内膜の表面が傷つき、ごく少量の出血が見られることがあります。
これが「着床出血」です。

着床出血は、妊娠したすべての人に起こるわけではなく、出血があったとしても少量で短期間で終わることがほとんどです。
そのため、妊娠に気づかないまま生理と間違えてしまうこともあります。
着床出血自体は病的なものではなく、妊娠の経過に影響を与える心配はありません。

着床出血はいつ起こる?

着床出血は、受精卵が着床する時期、つまり生理予定日の頃に起こることが多いです。
具体的には、排卵日から約7〜10日後、生理予定日と前後して見られることがあります。
妊娠検査薬が陽性になる少し前に見られることもあれば、陽性になった後で気づくこともあります。

着床出血の色や量、生理との違い

着床出血と生理の出血は、色、量、期間で違いが見られます。

特徴 着床出血 生理の出血
ピンク色、茶褐色、ごく薄い赤色 鮮血、暗赤色
ごく少量、おりものに混じる程度 比較的多い
期間 1〜3日程度、長くても数日 3日〜7日程度(個人差あり)
経過 短期間で自然に止まる 数日続き、徐々に量が減り止まる
症状 腹痛や腰痛はほとんどない 腹痛、腰痛、頭痛などPMS症状を伴うことも

着床出血の色は、子宮内膜が傷ついた古い血液が排出されるため、ピンク色や茶褐色、あるいはごく薄い赤色であることが多いです。
量はナプキンを交換するほどではなく、おりものに少量の血が混じる程度です。
期間も短く、数日で自然に止まります。

一方、生理の出血は鮮血や暗赤色で、量も比較的多く、数日間続きます。
生理特有の腹痛や腰痛などの症状を伴うこともあります。
これらの違いから、着床出血か生理かを判断する手がかりになりますが、判断が難しい場合や不安な場合は医療機関に相談しましょう。

着床出血はどのくらい続く?

着床出血の期間は個人差がありますが、1日〜3日程度で終わることがほとんどです。
長くても数日で自然に止まります。
もし1週間以上続く場合や、出血の量が増える場合は、着床出血以外の原因も考えられるため、医療機関を受診してください。

妊娠中の出血の種類と原因

妊娠中に見られる出血の原因は、妊娠の時期によっても異なりますが、大きく分けて「心配のいらない生理的出血」と「注意が必要な病的な出血」に分けられます。

心配のいらない生理的出血

生理的出血とは、妊娠の経過に伴って起こる、比較的少量で一時的な出血のことです。
病的な原因による出血ではないため、経過観察となることが多いです。

  • 着床出血: 前述の通り、妊娠初期に着床時に起こる出血です。
  • ホルモンバランスの変化による出血: 妊娠によってホルモンバランスが大きく変化する影響で、子宮や腟からの出血が起こることがあります。
  • 子宮頸管からの出血: 子宮頸管は非常にデリケートで血管が豊富なため、少しの刺激(内診や性行為など)で傷つきやすく、出血することがあります。
    ポリープなどがある場合も出血しやすくなります。
  • おしるし: 妊娠後期、特に臨月が近づくと、出産が近いサインとして「おしるし」と呼ばれる出血が見られることがあります。
    これは、子宮口が開き始める際に卵膜が子宮壁から剥がれて起こる少量の出血で、粘液が混じっていることが多いです。
    おしるしがあったからといって、すぐに陣痛が始まるわけではありません。

これらの生理的出血は、ほとんどの場合、腹痛を伴わず、出血量も少量で自然に止まります。
ただし、自己判断は危険です。
出血に気づいたら、必ず医療機関に連絡して指示を仰ぐようにしましょう。

注意が必要な病的な出血

妊娠中の出血の中には、母体や胎児にとって注意が必要な病的な原因によるものがあります。
これらの出血は、適切な診断と治療が必要となるため、出血量にかかわらず、すぐに医療機関を受診することが重要です。

切迫流産・切迫早産

切迫流産は妊娠22週未満、切迫早産は妊娠22週以降37週未満で、流産や早産になりかかっている状態を指します。
出血や下腹部痛、お腹の張りなどが主な症状です。

  • 切迫流産: 妊娠初期〜中期に起こります。
    子宮内の出血(絨毛膜下血腫など)や子宮の収縮が原因となることがあります。
    出血量や腹痛の程度はさまざまです。
    出血が少量であっても、進行すると流産に至る可能性があります。
  • 切迫早産: 妊娠後期に起こります。
    子宮頸管が短くなったり、子宮口が開いてきたりします。
    出血は伴わないこともありますが、お腹の張りや規則的な子宮収縮が主なサインです。
    出血が見られる場合は、常位胎盤早期剥離などの可能性も考慮されます。

いずれの場合も、安静や薬による治療が必要となることがあります。
出血に加えてお腹の張りや痛みが伴う場合は、特に注意が必要です。

異所性妊娠(子宮外妊娠)

異所性妊娠は、受精卵が子宮内膜以外の場所(卵管が最も多い)に着床してしまう状態です。
妊娠初期に起こり、性器出血や下腹部痛が主な症状です。

最初は少量の不正出血から始まり、徐々に痛みが強くなることがあります。
卵管が破裂すると、激しい腹痛や多量の腹腔内出血を引き起こし、母体の命に関わる緊急性の高い状態となります。
妊娠初期の出血で、特に下腹部(片側が多い)に痛みを伴う場合は、異所性妊娠を強く疑い、すぐに医療機関を受診する必要があります。

胞状奇胎

胞状奇胎は、受精卵の発育異常により、胎盤となるはずの絨毛組織が異常に増殖し、子宮内に水泡状の粒々(ブドウの房のような形)が充満してしまう病気です。
比較的稀ですが、妊娠初期に出血や子宮の異常な増大、つわりがひどくなるなどの症状が見られます。

出血は鮮血や茶褐色で、持続的に少量続くことが多いです。
超音波検査で診断され、子宮内容除去術による治療が必要です。
治療後も、悪性化する可能性(絨毛癌)があるため、定期的な経過観察が非常に重要です。

絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫は、胎嚢(赤ちゃんが入っている袋)を包む絨毛膜と子宮壁の間に血液が溜まって血腫ができる状態です。
妊娠初期によく見られ、血腫の大きさによって症状や予後が異なります。

少量の出血で気づくことが多いですが、血腫が大きい場合は多量の出血や腹痛を伴うこともあります。
出血の色は茶褐色から鮮血までさまざまです。
血腫の大きさや位置によっては、流産や早産の原因となることもありますが、血腫が吸収されて自然に消失し、妊娠を継続できるケースも多くあります。
医師の指示に従い、安静にして経過を観察することが重要です。

その他の原因(子宮頸管ポリープなど)

上記以外にも、妊娠中の出血の原因として以下のようなものがあります。

  • 子宮頸管ポリープ: 子宮頸管にできる良性の腫瘍で、妊娠中にホルモンの影響で大きくなったり、刺激を受けやすくなったりして出血することがあります。
    出血は少量で、鮮血や茶褐色であることが多いです。
  • 腟炎・子宮頸管炎: 腟や子宮頸管の炎症によって、粘膜が傷つき出血することがあります。
    おりものの異常や痒みなどを伴うこともあります。
  • 性行為後の出血: 性行為による刺激で、子宮頸管や腟の粘膜が傷つき出血することがあります。
    特に妊娠中はデリケートになっているため起こりやすいです。
  • 子宮頸がん: 妊娠中に子宮頸がんが発見されることもあります。
    がん病変からの出血が見られることがあります。
    妊婦健診の子宮頸がん検診で発見されることが多いです。
  • 常位胎盤早期剥離: 妊娠後期に、まだ出産前なのに胎盤が子宮壁から剥がれてしまう非常に危険な状態です。
    激しい腹痛と多量の出血を伴うことが多いですが、出血が見られないこともあります。
    母子ともに命に関わる緊急性の高い状態です。
  • 前置胎盤: 胎盤が子宮口を覆うように付着している状態です。
    妊娠後期に、子宮口が開くにつれて胎盤の一部が剥がれ、痛みを伴わない性器出血(警告出血)が見られることがあります。
    出血量が多い場合は危険です。

このように、妊娠中の出血には様々な原因があり、中には迅速な対応が必要なものも含まれます。
自己判断で「大丈夫だろう」と軽く考えず、出血に気づいたら必ず医療機関に連絡することが大切です。

出血の色や量、塊でわかること

出血の色や量、レバーのような塊の有無は、出血の原因を推測する手がかりになります。
ただし、あくまで目安であり、これらの情報だけで自己判断することはできません。
必ず医療機関に伝えて、医師の判断を仰ぎましょう。

鮮血の場合

明るい赤色の鮮血が見られる場合、比較的最近に出血したことを示唆します。

  • 考えられる原因: 着床出血、子宮頸管からの出血(ポリープや性交後など)、切迫流産・切迫早産、常位胎盤早期剥離、前置胎盤、胞状奇胎など。
  • 注意点: 鮮血で量が多い場合や、腹痛を伴う場合は、流産や常位胎盤早期剥離など、緊急性の高い状態の可能性があります。
    すぐに医療機関に連絡または受診してください。
    少量で一時的な鮮血であれば、頸管からの出血などの可能性もありますが、自己判断は禁物です。

茶褐色・ピンク色の血の場合

茶褐色やピンク色の出血は、比較的古い血液が排出されていることを示唆します。

  • 考えられる原因: 着床出血、絨毛膜下血腫(血腫が吸収される過程)、ホルモンバランスの変化による出血、少量の生理的出血など。
  • 注意点: 茶褐色の出血は、鮮血に比べて緊急性は低いことが多いですが、絨毛膜下血腫からの出血が少量続いている可能性もあります。
    量が増えたり、鮮血に変わったり、腹痛を伴う場合は注意が必要です。
    不安な場合は医療機関に相談しましょう。
    ピンク色の出血も、少量で腹痛がなければ生理的出血の可能性が高いですが、これも自己判断は避けましょう。

レバーのような塊が出る場合

血液が子宮内で固まり、排出される際にレバー状の塊となることがあります。

  • 考えられる原因: 流産(進行流産・不全流産)、絨毛膜下血腫、子宮内の出血量が多い場合など。
  • 注意点: レバーのような塊が出る場合は、子宮内での出血量が多い、あるいは妊娠組織の一部が排出されている可能性があります。
    流産が進行しているサインであることも少なくありません。
    腹痛を伴うことが多いです。
    すぐに医療機関に連絡し、受診してください。

生理のような大量の出血の場合

生理2日目のような多量の出血が見られる場合、緊急性の高い状態である可能性が非常に高いです。

  • 考えられる原因: 進行流産・不全流産、常位胎盤早期剥離、前置胎盤からの大量出血、異所性妊娠(卵管破裂)など。
  • 注意点: 大量の出血は、母体の貧血やショック状態を引き起こす可能性があり、胎児の状態も危険なことがあります。
    腹痛を伴うことが多く、吐き気やめまいなどを伴うこともあります。
    すぐに救急車を呼ぶか、緊急で医療機関を受診してください。
    ナプキンでは間に合わないほどの出血は、迷わず緊急対応が必要です。

これらの情報はあくまで一般的な目安です。
同じような出血の色や量でも、原因が全く異なることもあります。
必ず、出血に気づいた時点ですぐにかかりつけの産婦人科に連絡し、指示を仰ぐようにしてください。

妊娠週数別の出血

妊娠中の出血は、その時期によって原因や緊急性が異なります。
妊娠週数別に、起こりやすい出血の原因と注意点を見ていきましょう。

妊娠初期(〜13週)の出血

妊娠初期は、妊娠が成立して間もない非常にデリケートな時期です。
出血の原因として最も多いのは、着床出血や絨毛膜下血腫ですが、流産、異所性妊娠、胞状奇胎など、注意が必要な病気もこの時期に診断されることが多いです。

  • 着床出血: 生理予定日頃に少量見られる生理的な出血。
  • 絨毛膜下血腫: 胎嚢の周囲に血腫ができる状態。
    出血量や腹痛の有無、血腫の大きさで対応が変わります。
    安静が必要となることが多いです。
  • 切迫流産: 出血や下腹部痛が見られる状態。
    出血量にかかわらず、医師の診察が必要です。
  • 進行流産・不全流産: 出血や腹痛が増強し、子宮内容物が排出される状態。
    多量の出血や塊を伴うことが多いです。
  • 異所性妊娠(子宮外妊娠): 子宮外に着床。
    出血と下腹部痛を伴うことが多いです。
    早期発見が非常に重要です。
  • 胞状奇胎: 絨毛組織の異常増殖。
    持続的な出血やひどいつわりなど。

この時期の出血は、赤ちゃんがまだ小さいだけに不安も大きいと思いますが、前述の通り心配のないケースもあります。
しかし、病的な原因との区別は専門家でなければ難しいため、「少量の出血だから様子を見よう」と自己判断せず、必ず医療機関に連絡してください。
特に、下腹部痛を伴う出血、量が多い出血、塊が出る出血は、緊急性が高いサインです。

妊娠中期(14週〜27週)の出血

妊娠中期になると、初期に比べて流産の可能性は低くなりますが、引き続き注意が必要です。
この時期に見られる出血の原因としては、切迫流産、絨毛膜下血腫、子宮頸管ポリープなどが考えられます。

  • 切迫流産: 妊娠14週以降の出血や腹痛、子宮頸管の変化。
    早産につながる可能性もあります。
  • 絨毛膜下血腫: 初期から続いていたり、新しくできたりすることもあります。
    血腫の大きさや位置によっては安静が必要です。
  • 子宮頸管ポリープ: 刺激による出血が多い原因です。
  • その他の原因: 腟炎、子宮頸管炎、子宮頸がんなど。

中期に入ると、胎盤がほぼ完成し、初期に比べて安定してくることが多いですが、油断はできません。
出血が見られたら、初期と同様に必ず医療機関に連絡しましょう。
特に、お腹の張りや痛みを伴う場合は、切迫流産の可能性を考えて、すぐに受診が必要です。

妊娠後期(28週〜)の出血

妊娠後期になると、切迫早産や常位胎盤早期剥離、前置胎盤など、胎盤や子宮口の状態に関連した原因が多くなります。
出産が近づくにつれて、おしるしが見られることもあります。

  • 切迫早産: お腹の張りや子宮頸管の変化が主なサインですが、出血を伴うこともあります。
  • 常位胎盤早期剥離: まだ出産前なのに胎盤が剥がれてしまう危険な状態。
    激しい腹痛と多量の出血を伴うことが多いですが、出血がないこともあります。
    緊急帝王切開が必要となることがほとんどです。
  • 前置胎盤: 胎盤が子宮口を覆っている状態。
    妊娠後期に痛みのない出血(警告出血)が見られます。
    出血量が多い場合は危険です。
  • おしるし: 臨月が近づき、子宮口が開く際に起こる少量の粘液性の出血。
  • その他の原因: 子宮頸管ポリープ、腟炎、性交後出血など。

妊娠後期に見られる出血は、常位胎盤早期剥離や前置胎盤など、母子ともに危険な状態のサインである可能性があります。
出血量にかかわらず、特にお腹の張りや痛みを伴う場合は、迷わずすぐに医療機関に連絡してください。
おしるしと判断できる場合でも、念のため医療機関に連絡して指示を仰ぐ方が安心です。

出血があった時の対処法

妊娠中に性器出血があった場合、どのように行動すべきかを知っておくことは非常に重要です。
冷静な対応が、母体と胎児の安全を守るために必要です。

まずは落ち着いて状態を確認

出血に気づいたら、まずは落ち着いて、以下の点を注意深く確認しましょう。

  1. 出血の色: 鮮血(明るい赤色)、茶褐色、ピンク色など。
  2. 出血の量: おりものに混じる程度、少量、生理程度、生理より多いなど。
    下着を汚す程度か、ナプキンが必要か。
  3. 出血の性状: サラサラしているか、粘液が混じっているか、レバーのような塊があるか。
  4. 時期: 妊娠週数。
  5. 随伴症状: 腹痛(どのような痛みか、持続的か、強さはどうか)、腰痛、お腹の張り、発熱、めまい、吐き気など、出血以外に気になる症状がないか。
  6. 誘因: 出血前に性行為や内診、激しい運動など、何か思い当たることはないか。

これらの情報は、医療機関に連絡する際に必ず聞かれることですので、できる限り正確に把握しておくことが大切です。
ナプキンやティッシュなどで出血の状況を確認し、必要であれば写真を撮っておくことも、医師に状態を伝える上で役立つことがあります。

自己判断せず医療機関へ連絡・受診

出血に気づいたら、自己判断せず、必ずかかりつけの産婦人科に連絡してください。
これが最も重要な対処法です。

「これくらいの量なら大丈夫だろう」「様子を見よう」と自己判断してしまうと、もし病的な原因による出血だった場合、対応が遅れてしまう可能性があります。
特に、緊急性の高い状態(流産、異所性妊娠、常位胎盤早期剥離など)であった場合、迅速な受診が母子ともに救命するために不可欠です。

夜間や休日であっても、緊急連絡先(病院の電話番号、里帰り出産の場合は実家近くの病院など)に連絡し、状況を伝えて指示を仰ぎましょう。
必要であれば、時間外であっても診察してもらえる場合があります。

受診時の注意点

医療機関に連絡し、受診が必要と指示された場合は、以下の点に注意して受診準備をしましょう。

  • 伝える情報: 電話で伝えた情報(出血の色、量、塊の有無、腹痛などの随伴症状、妊娠週数、出血が始まった時期など)を改めて整理しておきましょう。
  • 準備するもの: 母子健康手帳、健康保険証、診察券は必ず持参します。
    出血している場合は、大きめのナプキンを着けて行くようにしましょう。
    出血量や性状を医師が確認する際に役立ちます。
  • 交通手段: 出血量が多い場合や腹痛が強い場合は、自分で運転したり公共交通機関を利用したりするのは危険な場合があります。
    家族に送ってもらうか、必要であれば救急車を呼ぶことも検討してください。
  • 付き添い: 可能であれば、家族やパートナーに付き添ってもらうと安心です。

病院では、内診や超音波検査などで子宮や卵巣の状態、胎児の状態などを詳しく調べ、出血の原因を特定し、適切な処置や指導が行われます。
安静が必要と判断された場合は、入院となることもあります。

出血があっても無事なケース、注意すべきケース

出血があると不安になりますが、「出血=すぐに危険」というわけではありません。
出血があっても無事に妊娠を継続できるケースも多くあります。
しかし、中には注意が必要な出血もあります。
どのような場合に安心できるのか、どのような場合に注意が必要なのか、具体的な例を見ていきましょう。

出血があっても無事だった例

  • 着床出血: 生理予定日頃に少量で短期間のピンク色や茶褐色の出血があり、その後の妊婦健診で赤ちゃんが順調に育っていることが確認できた。
  • 子宮頸管ポリープからの出血: 内診や性行為後に少量の鮮血が見られたが、ポリープが原因と診断され、特別な処置は不要で経過観察となった。
  • 少量の絨毛膜下血腫: 妊娠初期に少量の茶褐色の出血が見られたが、血腫が小さく、安静にすることで自然に吸収され、出血も止まり、妊娠を継続できた。
  • おしるし: 臨月に入ってから、少量の粘液性の出血が見られ、その後陣痛が来て無事に出産に至った。

これらの例のように、出血があっても診断の結果、心配のない原因であったり、安静などで改善が見られたりするケースは少なくありません。
しかし、これらのケースも、自己判断ではなく、医療機関を受診した上で診断された結果であるという点が重要です。

どんな出血に注意が必要?

以下のような出血が見られる場合は、病的な原因が強く疑われ、注意が必要です。
迷わずすぐに医療機関に連絡・受診してください。

  • 出血量が多い(生理の量程度、あるいはそれ以上)
  • 鮮血である
  • レバーのような塊が出る
  • 強い下腹部痛や腰痛を伴う
  • お腹の張り(子宮収縮)を伴う
  • 発熱やめまい、吐き気など、出血以外の全身症状を伴う
  • 妊娠週数に関わらず、持続的に出血が続く
  • 妊娠後期に痛みを伴う出血がある(常位胎盤早期剥離の可能性)
  • 妊娠後期に痛みを伴わない大量の出血がある(前置胎盤からの大量出血の可能性)

これらの症状は、流産や早産、異所性妊娠、常位胎盤早期剥離など、母体や胎児にとって危険な状態のサインである可能性があります。
特に、出血量が多い場合や、強い痛みを伴う場合は、緊急性が高いと考えられます。

受診の目安

出血があった場合、基本的には「出血に気づいたらすぐに医療機関へ連絡し、指示を仰ぐ」が原則です。
その上で、特に以下のような場合は、速やかに受診を検討してください。

  • 少量の茶褐色やピンク色の出血で、腹痛がない: 落ち着いてかかりつけの産婦人科に電話で相談し、指示を仰ぎましょう。
    通常診療時間内の受診となることが多いです。
  • 少量の鮮血で、腹痛がない: 少量の鮮血でも念のため、すぐに医療機関に連絡しましょう。
    子宮頸管からの出血など、比較的軽微な原因の場合もありますが、診断が必要です。
  • 出血量が多い(生理程度以上)
  • 鮮血で、出血量が少量でも持続している
  • レバーのような塊が出る
  • 下腹部痛や腰痛、お腹の張りを伴う

これらの場合は、夜間や休日であっても、躊躇なく緊急連絡先に電話してください。
必要に応じて時間外や救急での対応となります。

「これくらい大丈夫かな?」と迷う場合でも、迷わず医療機関に連絡することをおすすめします。
専門家である医師や助産師に相談することで、適切な判断と対応を得られ、安心にもつながります。

まとめ:妊娠中の出血に不安を感じたら医療機関へ相談しましょう

妊娠中の出血は、特に初めての妊娠の場合など、多くの妊婦さんにとって非常に大きな不安材料となります。
「赤ちゃんは大丈夫だろうか」「流産してしまうのではないか」といった心配が頭をよぎるでしょう。

この記事でご紹介したように、妊娠中の出血には、着床出血や子宮頸管からの出血、おしるしなど、必ずしも心配のいらない生理的なものから、流産、早産、異所性妊娠、常位胎盤早期剥離など、迅速な対応が必要な病的なものまで、さまざまな原因があります。
出血の色や量、塊の有無、伴う症状、そして妊娠週数によって、考えられる原因や緊急性は異なります。

大切なのは、これらの情報を知っておくことと同時に、自己判断をしないことです。
出血に気づいたら、出血の状態(色、量、塊の有無)や伴う症状(腹痛、お腹の張りなど)を冷静に確認し、すぐに、必ず、かかりつけの産婦人科や緊急連絡先に連絡してください。
夜間や休日であっても、迷わず連絡することが、母体と胎児の安全を守るために最も重要です。

医療機関では、医師や助産師が詳しく状況を聞き、内診や超音波検査などで診断を行います。
出血の原因に応じた適切な処置や安静の指示、今後の見通しなどについて説明を受けることができます。
専門家による診断とサポートを受けることで、不安が和らぎ、安心して妊娠生活を送ることにつながります。

妊娠中は、体調や心の状態が日々変化します。
少しでも気になることや不安なことがあれば、遠慮なく医療機関に相談しましょう。


免責事項: 本記事は情報提供のみを目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。
妊娠中の出血があった場合は、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次