つわりは、妊娠のごく初期から始まる可能性があり、多くの妊婦さんが経験する体の変化です。人によって症状の程度や始まり方、終わりの時期には大きな差がありますが、「つわりいつから始まるの?」という疑問は、妊娠したかもと思った方が最初に抱く不安の一つでしょう。この記事では、つわりが始まる時期、ピーク、いつまで続くか、具体的な症状や原因、つらい時期を乗り切るための対処法、医療機関への相談目安まで、詳しく解説します。
つわりが始まるのはいつから?妊娠週数別の目安
つわりが始まる時期は個人差が大きいですが、一般的には妊娠初期に多く見られます。妊娠週数で見た場合、いくつかの目安があります。
早い人は妊娠何週からつわりを感じる?
妊娠超初期と呼ばれる妊娠3週頃から、早い人はつわりのような症状を感じ始めることがあります。これはまだ胎嚢(たいのう)が確認できるかできないかといった時期ですが、体内のホルモンバランスが変化し始めているサインとして、吐き気や胃のむかつき、だるさなどを感じることがあります。ただし、この時期に感じる症状は、生理前の症状や風邪の引き始めと区別がつきにくいことも多いです。
一般的に多いつわり開始時期
多くの妊婦さんがつわりを感じ始めるのは、妊娠5週頃から妊娠6週頃にかけてです。この時期は、超音波検査で胎嚢が確認でき、心拍が確認できるようになる頃です。妊娠の成立がはっきりするとともに、つわり症状も本格的に始まるというケースが多く見られます。
生理予定日前につわりを感じることはある?
はい、あります。前述の通り、早い人では妊娠3週頃から症状が出ることがあり、これは生理予定日(妊娠4週0日)よりも前です。ただし、生理予定日より前に感じる症状は、妊娠によるものか、単なる体調不良か、生理前の症状(PMS)なのかを区別するのが難しいことが多いです。気になる場合は、生理予定日を過ぎてから市販の妊娠検査薬を使ってみるか、産婦人科を受診して確認することをおすすめします。
性行為後何日でつわりが始まる?
性行為からつわりが始まるまでには、いくつかのステップを経るため、ある程度の時間が必要です。
- 性行為と受精: 性行為後、精子が卵子と出会い受精が起こります(通常1日以内)。
- 受精卵の分割と移動: 受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を移動します(約3~4日)。
- 着床: 受精卵が子宮内膜に根を下ろし、妊娠が成立します(受精から約7~10日後)。
- hCGホルモンの分泌: 着床が完了すると、胎盤になる部分からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが分泌され始めます。このhCGホルモンが、つわりの主な原因の一つと考えられています。
- つわり症状の出現: hCGホルモンの血中濃度が上昇するにつれて、つわりの症状が現れます。
これらのステップを踏まえるため、性行為からつわりが始まるまでには、最短でも2週間程度、一般的には3週間以上かかることが多いです。性行為後すぐに感じる体調の変化は、妊娠とは直接関係のない他の要因である可能性が高いでしょう。
つわりのピークはいつ頃?
つわりの症状が最もつらくなるピークは、一般的に妊娠8週から妊娠11週頃に訪れると言われています(参考:https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/when-is-the-peak-of-morning-sickness-tips-for-overcoming-it/)。この時期は、妊娠を維持するために必要なhCGホルモンの分泌量が急激に増加し、血中濃度がピークを迎える頃と一致します。吐き気や嘔吐がひどくなったり、特定のものが全く食べられなくなったり、一日中気持ち悪い状態が続いたりと、日常生活に支障をきたすほどの症状が出る人も少なくありません。
この時期を過ぎると、多くの人は徐々に症状が落ち着いてきますが、ピークの時期や症状の強さには個人差があります。
つわりはいつまで続く?終わりについて
「このつわりはいつまで続くの?」という疑問は、つらい時期を過ごす妊婦さんが最も知りたいことでしょう。つわりが終わる時期も個人差が大きいですが、多くの場合妊娠12週から妊娠16週頃までに徐々に症状が軽快し、終わる傾向があります(参考:https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/when-is-the-peak-of-morning-sickness-tips-for-overcoming-it/)。
妊娠12週頃になると、胎盤が完成に近づき、hCGホルモンの分泌量が減少に転じるため、つわり症状も和らぐと考えられています。しかし、中には妊娠中期以降もつわりが続いたり、出産まで続いたりする人もいます。逆に、ほとんどつわりを感じないまま妊娠期を過ごす人もいます。つわりの終わり方も人それぞれで、ある日突然終わる人もいれば、少しずつ楽になっていく人もいます。
つわりの主な症状
つわりと一言で言っても、その症状は非常に多様です。代表的なものを以下に挙げます。
吐き気・嘔吐
最もよく知られているつわりの症状です。朝起きた時に特にひどく感じる人もいれば、一日中吐き気が続く人もいます。実際に吐いてしまうこともあれば、吐き気だけが続くこともあります。特定の食べ物や飲み物、匂いによって吐き気が誘発されることもあります。
食べ物の好みの変化や食欲不振
今まで好きだったものが食べられなくなったり、普段食べないものが無性に食べたくなったりすることがあります。ご飯の炊ける匂いや調理中の匂いがダメになる人も多いです。食欲が全くわかなくなり、食べられるものが限られてしまうこともあります。
特定のにおいに敏感になる
嗅覚が非常に敏感になり、これまで気にならなかった日常生活の様々な匂い(例えば、タバコの匂い、香水、シャンプー、洗剤、食べ物の匂いなど)が不快に感じられ、吐き気を誘発することがあります。
眠気やだるさ(倦怠感)
常に体がだるく、強い眠気を感じることもつわりの代表的な症状です。十分な睡眠をとっても眠気が取れなかったり、体が重く感じられたりします。妊娠初期はホルモンバランスの変化や体の変化にエネルギーを使うため、疲れやすくなることが原因の一つと考えられています。
その他の症状(よだれつわりなど)
上記以外にも様々な症状があります。
- よだれつわり: 口の中に常に多量の唾液が溜まり、不快感を感じる症状です。飲み込むのが難しく、吐き出してしまう人もいます。
- においつわり: 前述の「特定のにおいに敏感になる」に加え、特定の匂いを異常に強く感じたり、存在しない匂いを感じたりすることもあります。
- 吐きづわり: 吐き気や嘔吐が主な症状。
- 食べづわり: 空腹になると気持ち悪くなり、何かを口にしていると症状が和らぐ。しかし、食べすぎるとまた気持ち悪くなることもある。
- 飲みづわり: 水分を摂ると吐き気が増したり、特定の飲み物しか受け付けなくなったりする。
このように、つわりの症状は多岐にわたり、複数の症状が同時に現れることも珍しくありません。
つわりが起こる原因と、なりやすい人の特徴
つわりがなぜ起こるのか、そのメカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの有力な説があります。
なぜつわりは起こるのか?主な原因
つわりの主な原因として、以下の要因が考えられています。
原因として考えられる主な要因 | 説明 |
---|---|
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ホルモン | 妊娠すると胎盤になる部分から分泌されるホルモンで、妊娠初期に急激に増加します。hCGの血中濃度の上昇がつわりの症状と関連が深いと考えられています。 |
エストロゲン・プロゲステロン | これらの女性ホルモンも妊娠初期に増加し、胃腸の働きを鈍らせたり、自律神経のバランスを崩したりすることがつわりの原因の一つとも言われています。 |
免疫反応 | 受精卵(胎児)を異物とみなす母体の免疫反応が関与しているという説もあります。 |
血糖値の変動 | 妊娠初期は血糖値が不安定になりやすく、低血糖がつわりを悪化させることがあります。 |
精神的な要因 | 妊娠に対する不安やストレスも、つわりを悪化させる要因となることがあります。 |
これらの要因が単独で作用するのではなく、複数組み合わさることでつわりが発症すると考えられています。
つわりになりやすい傾向がある人とは
必ずしも全ての人に当てはまるわけではありませんが、以下のような人はつわりになりやすい傾向があると言われることがあります。
- 初産婦: 最初の妊娠でつわりを経験する人が多いと言われています。
- 多胎妊娠: 双子や三つ子などの多胎妊娠の場合、hCGホルモンの分泌量が多くなるため、つわりが重くなりやすい傾向があります。
- 母親や姉妹がつわりが重かった: 体質的な要因も関係している可能性があります。
- 乗り物酔いしやすい: 三半規管が敏感な人は、つわりによる吐き気を感じやすいという説があります。
- 妊娠前から胃腸の調子が悪かった: もともと胃腸が弱い人もつわり症状が出やすい可能性があります。
ただし、これらはあくまで傾向であり、これらの特徴がない人でもつわりになることはありますし、これらの特徴がある人でも全くつわりがないこともあります。
つらいつわりを乗り切るための対処法
つわりに特効薬はありませんが、日常生活での工夫で少しでも楽に過ごすことができる場合があります。
食事の工夫:食べられるものを少量ずつ
- 空腹を避ける: 空腹になると吐き気が増す「食べづわり」の場合は、常に何かを口にしていると楽になることがあります。クラッカー、ビスケット、果物など、手軽につまめるものを枕元や持ち歩き用のバッグに入れておくと良いでしょう。
- 一度にたくさん食べない: 胃がいっぱいになると吐き気を感じやすいため、一度にたくさん食べるのではなく、少量ずつ、回数を分けて食べるようにします。1日3食にとらわれず、5〜6回に分けても構いません。
- 食べやすいものを探す: 匂いが少なく、さっぱりしたもの(例えば、冷たい麺類、フルーツ、ゼリー、ヨーグルトなど)が食べやすいと感じる人が多いようです。揚げ物や脂っこいもの、香辛料の強いものは避けた方が無難です。
- 水分も少量ずつ: 吐き気が強い時は、一度にたくさん飲むと吐いてしまうことがあります。ストローを使ったり、氷をなめたりして、少しずつ水分を摂るようにします。
- 食事のタイミング: 朝一番が辛い人は、起き上がる前に枕元に置いたものを少し食べてからゆっくり起き上がるなど、タイミングを工夫してみましょう。
脱水予防のための水分補給
吐き気や嘔吐がひどいと、水分が摂れずに脱水症状になる危険性があります。水だけでなく、経口補水液、スポーツドリンク、麦茶、薄めたジュース、スープなど、飲めるものを少量ずつ、こまめに摂ることが大切です。冷たい飲み物や炭酸水が飲みやすいという人もいます。
無理せず十分な休息をとる
つわりの時期は体が疲れやすくなっています。仕事や家事は無理せず、できるだけ休息をとりましょう。横になるだけでも体が楽になることがあります。家族やパートナーに協力を求めることも大切です。
気分転換やリラックスできる時間を作る
つわりは精神的な要因も関与すると言われています。好きな音楽を聴く、軽い散歩をする(体調が良い時)、好きなアロマを焚く(つわりで匂いに敏感になっている場合は注意)、ゆっくりお風呂に入るなど、自分がリラックスできる時間を作りましょう。ただし、匂いに敏感になっている場合は、これまで好きだった香りでも不快に感じる可能性があるので、無理は禁物です。
家族や周囲のサポートを得る
つらい時期は、一人で抱え込まずに、パートナーや家族、友人など周囲の人に正直に話して協力を求めましょう。食事の準備や家事を手伝ってもらったり、話を聞いてもらったりするだけでも気持ちが楽になります。職場の理解を得ることも大切です。
こんな時は医療機関へ相談を(重症妊娠悪阻のサイン)
多くのつわりは妊娠中期までに自然に軽快しますが、中には重症妊娠悪阻(じゅうしょうにんしんおそ)と呼ばれる状態になり、医療的なケアが必要になる場合があります。以下のサインが見られる場合は、我慢せずに必ず医療機関を受診しましょう。
- 全く水分や食事が摂れない
- 体重が妊娠前から5%以上減少した
- 一日中ひどい吐き気や嘔吐が続き、ぐったりしている
- 尿の量が極端に少ない、または全く出ない
- 立ちくらみやめまいがひどい
- ケトン体(体の脂肪を分解してエネルギーにしている時に出る物質)が尿から検出される(自分で検査薬を使うか、医療機関で調べてもらう)
重症妊娠悪阻は、母体の脱水や栄養不足を引き起こし、胎児の発育にも影響を与える可能性があります。点滴で水分や栄養を補給したり、症状を和らげる薬が処方されたりすることがあります。つらい症状を一人で耐え忍ばず、専門家のサポートを受けましょう。
まとめ:つわりは個人差が大きい症状です
「つわりいつから?」という疑問への答えは、早い人で妊娠3週頃から、多くの人は妊娠5~6週頃から始まります。つわりのピークは妊娠8~11週頃に訪れ、そして多くの場合妊娠12週から妊娠16週頃には症状が軽減し、終わる傾向があります(参考:https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/when-is-the-peak-of-morning-sickness-tips-for-overcoming-it/)。しかし、これはあくまで一般的な目安であり、つわりの始まり方、症状の強さ、終わりの時期には大きな個人差があります。全くつわりがない人もいれば、出産まで続く人もいます。
つらい時期は無理をせず、食べられるものを少量ずつ食べたり、こまめに水分補給をしたり、十分に休息をとったりと、自分に合った対処法を見つけることが大切です。そして、もし「全く食べられない」「水分も摂れない」「体重が大きく減ってしまった」といった重症妊娠悪阻のサインが見られた場合は、迷わず医療機関を受診してください。
つわりは、赤ちゃんが元気に育っている証拠とも言われますが、つらい時期を無理に我慢する必要はありません。一人で抱え込まず、家族や医療機関のサポートを得ながら、この時期を乗り越えていきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関で相談し、医師の指示に従ってください。